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人気脚本家の登竜門として知られる「フジテレビヤングシナリオ大賞」の第32回大賞受賞者、的場友見さん(39)がこのほどリモート取材に応じ、24日放送(深夜0・55、関東ローカル)の受賞作「サロガシー」について思いを語った。
28歳の女性が、ゲイの兄のために代理母(サロガシー)として妊娠、出産を決意するところから始まるヒューマンドラマ。主人公の江島環をドラマ初主演となる堀田真由(22)が演じる。ゲイの兄には細田善彦、そのパートナーに●塚健太、兄の元恋人に松本若菜、そして環の会社の先輩に斎藤工が決まっている。
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今回の選考理由として「代理出産、LGBTなどセンシティブな題材だが、この作品の真骨頂は登場人物たちの人間的魅力ではないか。特別な人たちではなく、どこにでもいる生活者たちの物語と思わす人物像を丁寧に描き出し、飽きさせずに展開していく構成も巧み。医療制度、法律、社会通念、倫理観…さまざまな問題に真摯に向き合う作者の姿勢もうかがえる」などと同局では語っている。
北海道出身の的場さんは早大第一文学部卒業後、アパレル、広告制作、出版社などを経て独立。現在はフリーのコピーライターとして活動している。
初受賞となるが、「やっていることは根本的に変わっていない。伝えたいことがあって手を動かして形にしていくという流れ」と脚本家デビューに気負いはない。
歴代受賞者には坂元裕二さん(第1回)、野島伸司さん(第2回)、野木亜紀子さん(第22回)らそうそうたる顔ぶれがそろっており、的場さんももちろん「尊敬する先生が受賞しているので」という理由で過去4作品応募していた。
題材のきっかけとなった執筆理由をこう話す。
「5、6年の付き合いとなるゲイの友人がある日、『僕の場合は結婚や子供を持つというライフイベントがなく、楽しいことがないよね』と。私が『子供を持つという願望はあるの?』と聞くと、海外でサロガシーがあることを教えてくれた」
同時期にこんなこともあった。
「ストレートの人と話していたら『セクシャルマイノリティーの人はかわいそう、辛い思いをしている』という発言を聞いた。じゃあ、ストレートなら幸せか…ゲイのカップル=特殊ととらえられたくなかったし、固定概念を覆す、違う視点を持ってもらいたいと思った」
作品は昨年初頭に2日で書き上げた。
コロナ禍で不寛容の時代、また東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長交代で男女平等、女性参画、多様性などの議論が活発となる中、まさにタイムリーな題材のように思える。
「時代をとらえている、狙っているわけではないが、時代にマッチしてきているとは思う。性別って人を表す一つの個性でしかない。女性、トランスジェンダーを採用してくださいなどとは思わない。フィルターを外してくださいとは思うけど」
尊敬する脚本家は、まだいる。橋田壽賀子さんはその生きざまが好きだという。「生涯現役で長く書けたらいいなあ」と自身も心から望む。
岡田惠和さんは「何か創作したいなあ」と考えあぐねていた時期に「最後から二番目の恋」(2012年1月期、フジ系)をFODで一気に視聴し「やっぱり書きたい」と強く思うきっかけを作ってくれた人である。
両親の影響もあり、小さい頃からドラマが大好きだった。5歳で見た「パパはニュースキャスター」(1987年1月期、TBS系)が記憶にあり、小4の時には「東京ラブストーリー」を夢中で見た。海外では「THIS IS US」(2016年、アメリカ)のダン・フォーゲルマン脚本がお気に入りだという。
夢は広がる。最近もマーケティング会社の人とSNSの話題になった。
「今の若者ってSNSにおいて普段の生活圏で関わらないことも関われるから理解と共感が幅広くて優しい人が多いよねって。個人的にそれって、まさに地上波のテレビが担うべき役割だなと思う。フィクションだからこそ、そこに情報を込めて伝えられることがある」
同年代の俳優が多く活躍することも刺激になる。
「出演していただいた斎藤さんはじめ、高橋一生さん、柴咲コウさん…いつかお仕事ができれば。これからも単語一つ一つを正しく使い、マイノリティーの人たちを書いていきたい」
「フジテレビヤングシナリオ大賞」は現在、第33回となる応募作品を募集中(3月末日締め切り)。詳細は公式HPへ。
また、14日からCS放送TWOで過去作品を一挙放送(17日まで8作品)することも決まった。「重版出来!」(16年4月期)「アンナチュラル」(18年1月期)「逃げるは恥だが役に立つ」(16年10月期、いずれもTBS系)などで有名になった野木さんの受賞作「さよならロビンソンクルーソー」(10年12月放送)をはじめ、将来を担うであろう脚本家たちの“デビュー作”が見られる。
●=猪の日の右上に「、」