1995年にオウム真理教により引き起こされた地下鉄サリン事件から、ちょうど26年となった20日、いまも後遺症に苦しむ被害者の映画監督が製作した事件のドキュメンタリー作品が東京都内で公開された。
「この映画は記録です。あの日サリンを吸っていまも毎日苦しんでいる被害者たちがいることを知ってほしい。事件を歴史にしてはいけない」と話したのは、さかはらあつし氏(54)。初監督した映画「AGANAI 地下鉄サリン事件と私」が、事件当日だったこの日、シアター・イメージフォーラム(渋谷区)で初日を迎えた。
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満員の観客を前に舞台挨拶に立ったさかはら氏はこの朝、東京メトロ・霞ケ関駅で事件の犠牲者への献花も行い、「最大の国家テロだった」と口に。自身は当時28歳で、出勤時に乗り込んだ日比谷線の車両で猛毒の神経ガス、サリンの入った袋を目撃。現在も手のしびれや体調不良に苦しむ。
作品ではオウムの元幹部で、後継団体アレフの荒木浩・広報部長と自ら対峙(たいじ)。さかはら氏は「初めて実際の被害者である僕と向き合わせることで、何かが変わってくれればと願った」と話したが、作中では荒木氏における絶望的な洗脳の深さも描かれる。
昨年からのコロナ禍で公開予定も遅れたが、現在の不安定な世相について「とんでもない情報にひっかかる人がいまも多すぎる。日本社会に当時と変わらない不穏さを感じる」と話したさかはら氏。「映画は若い人たちにこそ観てほしい。いろいろな情報をうのみにせず、ふとしたはずみで、良くないものに陥っていってしまうことがないように」と願いを込めた。
映画は今後、全国で順次公開予定。4月には香港国際映画祭にも出品される。(丸山汎)