国内で接種されている米ファイザー製と今月中に使用が承認される見通しの2社製は、いずれも遺伝子操作技術を用いた「遺伝子ワクチン」。その“遺伝子”への不安を口にする専門家もいる。
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国立遺伝学研究所の川上浩一教授(61)は「未知のことが多い。遺伝子を人体に導入することには慎重であるべきだ」と訴える。
遺伝子ワクチンは人工合成した遺伝物質を筋肉に注射し、体内でウイルスのタンパク質の一部を生成させる。外部で培養された抗原などを打つ従来型のワクチンとは根本的に異なる。通常は10年以上かかるワクチン開発を、今回は約1年で実用化。遺伝子ワクチンが実用化されるのは、今回が事実上初めてだ。
ファイザー製は「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン」と呼ばれるもの。海外の臨床試験で95%の発症予防効果が示されている。一方、動物実験で人工遺伝子が肝臓に到達した例があったといい、体内に入った後の遺伝子の動きを「完全に制御することはできない」と川上氏は言う。
「ワクチンではなく、『遺伝子治療』と呼ぶべきだ」というのは新潟大名誉教授で予防医療学が専門の医学博士、岡田正彦氏(74)。米国では接種後に血小板が減少し出血が止まらなくなる症例がみられ、死者も出ている。「mRNAが体内に長く残り、抗原を作り続けて過剰な免疫反応を引き起こした可能性がある」と分析する。
健康への影響も2~3年、種類によっては10年先まで見なくてはならないとした上で、岡田氏は「健康な人にわずかでもリスクがあるものを接種させるのは、医学の倫理に反する。私は家族や患者にも打たせたくない」と力を込めた。
感染拡大への対処として川上氏は「検査態勢を拡充して感染者を隔離するべきだ」と主張した上で、「打つワクチンをよく理解した上で判断することが大切」と呼びかける。岡田氏は治療薬について「海外では10~20種類の有力な候補がある。特効薬は近く出る」と期待を寄せ、対策をワクチンだけに頼るべきではないと強調した。 (丸山汎)
◆新型コロナウイルスのワクチン
新型コロナウイルス感染症の発症や重症化を防ぐために開発されたワクチン。日本は米ファイザー製の接種が進み、米モデルナ、英アストラゼネカの2社製も近く承認可否が判断される。モデルナ製は、国が設置し24日から運用開始される大規模接種センター(東京・大阪)で使用する予定。厚生労働省によると2月からの接種後に計39人が死亡したが、因果関係はいずれも判明していない。