【写真】久しぶりの連ドラでコメディを熱演する中井貴一
――今回の作品に出演を決めた最大の理由とは何ですか?
【中井】根本的に僕は天の邪鬼だと思うんです。子どもの頃から父(俳優の佐田啓二さん)のように役者になりたいとか、芸事が好きだったとか、そういったこともなく、芸能界から遠く離れた環境で育ってきたんだけど、大学生の時に映画(松林宗恵監督の『連合艦隊』1981年公開)に出ることになって。この先も役者をやっていくなら、自分はどうしていったらいいのか考えた時に、「常にじゃない方でいよう」と考えたんです。
日本人って流行りモノに乗るのが好きな民族だと思うんですね。“〇〇ちゃんが持っているから、自分も欲しい!”“これだけの人が並んでいるんだから、きっとおいしいに違いない!”みたいな、心理傾向が強いと思うんですが、僕はちょっと変わっていて(笑)。「じゃない方にいよう」「じゃない方を選ぼう」とやってきました。デビューしたときも多くの俳優さんは当然所属事務所を探すのだと思うのですが、皆そうするのだよと言われた途端、無謀にも自分で事務所を作ってしまったり、20代の頃はトレンディドラマが全盛だったんですが、そうじゃない方の作品に出させていただいてました(笑)。
今回の『共演NG』も「大人のラブコメディ」と聞いて、“今の時代、誰が観るんだよ”と言う人がいてもおかしくないジャンルですよ。だからこそ、そういうドラマも日本で作れるんだっていう足跡を残したいな、と。でなければ、似たりよったりのものしか作れなくなってしまう。『共演NG』が今の時代の視聴者に合うかどうかわからないけど、いま一番ないドラマだと思ったので、引き受けさせていただきました。
――「大人のラブコメディ」をどのように演じたいと思っていたんですか?
【中井】先日、誕生日を迎えて59歳になりましたが、そんないい歳をした大人のラブシーンなんて、「えーっ、気持ち悪い!」って思う気持ちが特に日本にはどこかあると思うんです。欧米に行くと、キスやハグは日常茶飯事で、そういう土壌から生まれた映画やドラマに大人のラブシーンがあっても、すごく素敵に見える。日本にはそういう土壌がそもそもないので、子どもの頃にそういうのを見て、引いてしまっていたんだけれど、こうして歳を重ねてきて、これから先に何か可能性を残していくならば、爽やかに、美しく、嫌悪感なく見られる大人のラブシーンも残していきたい、と。過去にいろいろあった男女が口げんかをするシーンは素直に見られると思いますが、そんなふたりの友情とも愛ともつかぬ部分をいかに清々しくさわやかに演じることができるか、その点が僕の一番のテーマになりました。