NTTによるNTTドコモの完全子会社化はなぜ行われるのか。そして携帯電話料金の値下げに結びついて、消費者の財布のひもが緩むのか。経済アナリスト、森永卓郎氏(63)に聞いた。
NTTにとって収益源はドコモしかなくなっていた。固定電話がもうからず、非通信サービスの拡充もうまく行っていない。ドコモの収益を取り込まないと、今後の研究開発投資もできない状況に追い込まれていた。
メリットは、事実上の統合により、資源を共有化すればNTTの体力が上がること。
デメリットは、NTTが再びプライスリーダーになり競争を制限する方向へ向かうと、国内の通信業界全体が力を落としかねないこと。1999年にNTTが分割された際は、強大すぎてバラバラにしなければ競争状態にならないという背景があった。しかし今回は政府に独占禁止法によりストップをかける気配はない。4兆円の資金も十分捻出できるだろう。
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ただ、菅政権が目指す携帯料金の値下げに対応するため、必ずしも完全子会社化が必要だったとは思わない。利用者が格安スマホに移らない最大の理由は、会社間の乗り換えが面倒だから。瞬時に他社に乗り換えられるシステムを構築すれば、放っておいても実質的な価格は下がるはずだ。
料金値下げは、若い世代を中心に消費増の効果を生み、短期的には景気にも好影響を与えるだろう。ただ、携帯各社の経営体力は弱まって、中長期的には5Gなどへの投資が滞る恐れが十分にある。(談)