1970年代の若者たちが共感する、等身大の演技をみせた森川さんが、静かに旅立った。
本紙の取材に応じた親族や関係者によると、2カ月前、体調不良のため病院で診察を受けた際、胃がんが発見され、すでに転移がみられた。森川さんは、新型コロナウイルス感染症の影響で入院した場合は面会が2時間に制限されているのを知り、都内にある自宅での在宅治療を選択。医師や看護師が連日、自宅を訪れて懸命の治療を続けた。
亡くなる前日の11日に面会した親族は、森川さんについて「妻を頼む」と涙を流したという。
森川さんは1964年に俳優デビュー。当時所属していた劇団の推薦で森田健作・千葉県知事(70)主演の日テレ系「おれは男だ!」(71~72年)に出演した。
青春群像の名作、日本テレビ系「俺たちの旅」(1975~76年)では浪人生、浜田大造(ワカメ)役で出演。共演した中村雅俊らと若者たちの等身大の姿を演じ、大人気となった。以後も日テレ系「俺たちの朝」(76~77年)などの青春ドラマに出演し、名バイプレーヤーとしての地位を確立した。
91年にはNHK大河ドラマ「太平記」に出演。2000年代に入ると活躍の場を舞台に移し、「劇団ケ・セラ・セラ」を旗揚げ。昨年は「港町ブルース」を上演するなど、晩年まで積極的に活動していた。
一方で、都内で夫人とスナックを経営していた。地元住民からは「正ちゃん」と呼ばれ、愛される存在だった。この日、訃報を知り、悲しみに暮れた同世代の関係者は、森川さんの人柄について「(『俺たちの旅』の)ワカメと一緒。お調子者でいたずら好きだけど、やるときはちゃんとやるという…。私たちの世代の象徴的存在でした」としのんだ。