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NHK連続テレビ小説の歴代ヒロインに迫る大型連載の3月は、2010年度前期「ゲゲゲの女房」に主演した松下奈緒(36)。「ゲゲゲの鬼太郎」の漫画家、水木しげるさんの妻、布枝さん(89)をモデルに、漫画しか頭にない夫を健気に支える良妻を演じた。夫役の俳優、向井理(39)とともに同作で大ブレークし、「ゲゲゲの~」は同年の流行語大賞を受賞。代表作への思いを語り尽くした。(取材構成・小山理絵)
■「また開いてるわよ!」奥さまが先生をお世話■
ヒロインを演じていた当時、たくさんの反響をいただきましたが、当時は目まぐるしくて、ブームになったという実感がありませんでした。今でもどこへ行っても「ゲゲゲの女房」と言われますし、皆さんの心に残っている作品なんだというのは、後になってからじわじわと感じていますね。
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当時は、演技の仕事を始めてから5、6年くらい。お芝居に対して確かなものはなかったのですが、撮影現場では、ただ緊張して終わるのではなく、役との向き合い方や脚本の読み解き方がおもしろいと思えるようになってきた時期でした。
オーディションを受けずにヒロインに選ばれたのですが、仕事の移動中、所属事務所の社長から電話で「朝ドラが決まった」と知らされました。それ以前に一度、朝ドラのオーディションを受けたことがあったので、ヒロインの家族や友人役で出るのかなと思って…。それもすごくうれしいことなんですけど、「ヒロインです」と説明され、「もう1回言って?」と尋ねたほど信じられませんでしたね。
私が演じた布美枝(ふみえ)は、水木しげる先生の奥さまの布枝(ぬのえ)さんがモデル。向井理さんが演じた水木先生がモデルの茂さんとは、お見合いから5日で結婚して、漫画家として成功するまで極貧生活を送ります。でも、布美枝は大変なことがあっても動じないというか、おおらかな女性。モデルの布枝さんが書いた原作のタイトルに「人生は……終わりよければ、すべてよし!!」とあるのですが、まさにその通りでした。
思い出すのは、撮影が楽しかったということ。布枝さんのマインドに、助けられていました。周りから、朝ドラは精神的にも体力的にも大変だと聞かされていたので、相当、覚悟をして臨んだのですが、こんなにもすがすがしく終わっていいのかなというくらい、すごく楽しかったですね。
水木先生と布枝さんには、クランクイン前にお会いしました。布枝さんからは「好きなようにやってください」と声をかけていただき、水木先生は隣で妖怪のように笑顔でおどけ、ポーズを取っていました。
そのとき、水木先生のズボンのチャックが開いていて…。布枝さんが「また開いてるわよ!」と言って閉めているのが、ほほえましかったです。お会いできたことで少し肩の力が抜けたというか、ご夫婦をこんなふうに演じられたらな、という思いになりました。
ご夫婦は撮影中も何度か現場に来てくださったんです。布枝さんはお会いするたびに手を握って「毎朝、見てるわ」と声をかけてくれました。手が温かくて、いつも泣きそうになりましたね。
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