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各地で“老舗”将棋道場の閉館が続いている。プロ棋士も輩出した広島将棋センター(広島市)は今月7日で終了し、日本将棋連盟直営の新宿将棋センター(東京・新宿)も今月末で幕を閉じる。ネット対局の普及に加え、新型コロナウイルス禍が経営を直撃。ただ子供人気の高まりに光明を見いだす向きもあるようだ。
3月中旬、平日の昼下がり。JR新宿駅から歩いて5分ほどのビル6階の一室に約20人がいた。将棋盤に向き合う高齢の常連客。プロ棋士による指導対局を熱心に見つめるファン…。だが駒音は、せわしなく行き交うJR線の走行音と駅近くのビジョンから流れる音楽にかき消されがちだ。
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新宿将棋センターは1970年代から新宿エリアで数度の移転を経て、2009年から現在の場所に落ち着いた。11年に連盟直営となったが、昨年3月に閉鎖が決まった。最盛期は平日に500人が詰めかけたというが、最近は100人程度。「閉鎖は寂しいというより、つらいですね」。同センターで40年勤務する芳賀徹氏(69)は声を落とす。
かつては“街の社交場”でもあった将棋道場が姿を消している。将棋界のレジェンド、羽生善治九段を生んだ八王子将棋クラブは18年末に閉店。故村山聖九段(98年死去、享年29)らを輩出した広島将棋センターは今月7日で40年以上の歴史に幕を閉じた。ファンや経営者の高齢化と、ネット対局の普及が主な要因だ。これに昨年来のコロナ禍も追い打ちをかけた。連盟は正確な件数を把握していないものの、各地で道場の閉鎖や休業が相次いでいる。
「レジャー白書」によると、直近の将棋人口は約620万人。ただ、大阪市で40年以上にわたり道場を経営する男性(70)は「実感として将棋人口は70年代と比べ4分の1程度。ブームはあっても愛好家の育成につながっていない」と危機感をあらわにする。
藤井聡太二冠の出現で近年、子供のファンは増えた。センターが閉鎖した広島では愛好家らが家賃の安い移転先を探し、「広島将棋会」の名称で4月中に“再興”する見通しとなった。新道場の世話人を務める矢野啓太氏(34)は「新たにファンになった子供たちのために再開したい」と力を込める。
新宿でも一部で存続を求める署名活動も始まっているという。芳賀氏は「『いつか聡太くんを負かす』と言っている小学生もいる。彼らを育成する義務がある」と移転による存続を訴えた。(篠田哉)
■囲碁も同様…“ステイホーム”影響
囲碁についても将棋と同様、教室や碁会所の閉鎖が増えている。日本棋院によると、各地で普及活動などを行う同棋院の支部のうち昨年度は25カ所が解散した。一方、同棋院が運営し対局もできるサイト「幽玄の間」は登録会員数が増加傾向。特に昨年3月に同サイト上で棋譜を保存した数が前月比で急に2割ほど増えたといい、コロナ禍による“ステイホーム”の影響とみられる。レジャー白書によると囲碁人口は約230万人で、10年前の約4割程度になっている。