高齢者でも医療従事者でもない自治体トップによる新型コロナワクチンの“抜け駆け”接種が、各地で問題化している。
72歳の菅首相は訪米を控えて4月上旬に2度目のワクチン接種を終えたが、その予定は事前に公表していた。自治体の長が感染すれば執務が滞るということを考慮すれば、優先対象者という考え方はある。とはいえ、ひそかに接種した後に発覚すれば、接種を待ち望みながらも予約が取れない人たちの批判を浴びることくらいは想像がつきそうなもの。言い訳はさまざまだったが、やはり“自分の命が大事”と聞こえてしまう。
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接種の優先順位は(1)医療従事者ら(2)65歳以上の高齢者(3)基礎疾患がある人、高齢者施設などの従事者、60~65歳の人(4)一般-となっている。自治体の長については特段の定めがなく、本来なら年齢で判断されることになる。ただ優先対象にしてもいいと考える人もいる一方で、全住民が無事に終了した後の最後にすべきだと考える人もいる。
自治体の長や職員は接種を優先すべきかどうかの位置づけを事前に明確にしておけば、問題にはならなかったはず。国はワクチンを対象人口に比例して自治体に供給し、後は自治体に任せるとの基本姿勢。各自治体でキャンセル分などが出た場合は自治体職員に振り分けるなどといった対応を、今からでも議論した方がいい。住民の不公平感を取り除く工夫も政治家の役割だ。(政治評論家)=毎週日曜掲載