北朝鮮、韓国との通信「完全遮断」批判ビラ散布に報復

　北朝鮮の朝鮮中央通信は９日、朝鮮労働党本部と韓国大統領府を結ぶ直通ラインを含め、韓国側との通信回線を同日正午（日本時間同）から完全遮断すると伝えた。韓国の脱北者団体による北朝鮮批判ビラ散布に対する最初の報復措置としている。　金正恩党委員長の妹、金与正党第１副部長と金英哲党副委員長が８日の対策会議で指示した。北朝鮮・開城の南北共同連絡事務所や軍同士の通信回線も遮断、廃棄する。　韓国政府によると、９日午前に連絡事務所や軍同士の通信回線による定時連絡を試みたが、北朝鮮は電話に出なかった。韓国統一省当局者は「通信回線は南北間の意思疎通の基本手段であり、維持されなければならない」と述べた。　与正氏らは「対南（韓国）事業を徹底して対敵事業に転換する」と表明。段階的行動を審議したとしており、今後さらに対抗措置を取る構えだ。　正恩氏は韓国の文在寅大統領と２０１８年に３回会談したが、米朝の非核化交渉が行き詰まり、南北関係も停滞していた。北朝鮮が強硬姿勢を鮮明にしたことで関係はさらに悪化しそうだ。　朝鮮中央通信は、韓国当局が敵対行為を黙認したと非難。「これ以上、対座することも論議する問題もないとの結論に至った」と強調した。　与正氏は４日の談話で再発防止を要求。経済協力事業の開城工業団地（稼働中断）の完全撤去や連絡事務所閉鎖、緊張緩和に向けた南北軍事合意の破棄を警告した。　北朝鮮は連日、抗議集会を組織。平壌では８日、若者や学生らによるデモ行進が行われた。（共同）