後手で挑戦者の高校生プロ、藤井聡太七段(17)が、渡辺明棋聖(36)=棋王・王将=を90手で下し2連勝。最年少タイトル獲得に王手をかけた。五番勝負の行方を決める大一番を東京・将棋会館で観戦した実力派棋士、飯島栄治七段(40)は「恐ろしいまでの完勝だった」と絶賛。17歳の挑戦者が盤面で披露した、その強さを象徴する2つの手を解説した。 見ていて震えた。「完勝」という一語で表現しきれない、藤井七段の勝ち方だった。 藤井七段は、一人だけ別の次元で戦っているようだ。ゴルフに例えるなら、誰よりもドライバーを20~30ヤード遠くまで飛ばせ、常にフェアウエーに落とすことができる。終盤のパッティング(詰将棋)でも絶対にミスがない。対局相手は、どう戦えばいいのか…。 その強さを象徴する手が2つあった。42手目の△5四金と、58手目の△3一銀。セオリーでは、どちらもリスクが高いとみなされる。それだけに渡辺棋聖は、完全に意表を突かれた。 △5四金は、守り駒である金を自陣の外の四段目まで上げることは危険を伴う。だが藤井七段には迷いがない。この手をきっかけに、相手の桂と銀を奪った。 △3一銀は、攻め駒の銀を守りに使った。この銀は△5四金をきっかけに奪ったもの。渡辺棋聖が直前に指した▲6六角は△2二金を狙うためだったが、この銀で取ることができなくなり、突破口を失った。 本局の攻防は、この2手に集約されていた。 先手の渡辺棋聖は、盤上の左下の自陣で自玉を金銀などで囲む、守りに重点を置いた「矢倉囲い」を大得意とする。だが連敗するわけにいかないため、先行逃げ切りを目指した。その思いは、銀を攻めに使い、囲いを広くとる攻撃型の「急戦矢倉」の陣形に表れ、先制攻撃を仕掛けたのだ。 藤井七段は「矢倉」で対抗し、中盤まで互角に見えた。だが△5四金を境にその差は少しずつ開き、50手目で互いの駒が正面でぶつかり始めた途端、大勢は△3一銀までの数手で決した。渡辺棋聖は藤井七段の玉に、王手を一度もかけることができず敗れた。 私は、渡辺棋聖のこのような負け方は見たことがない。本人は敗因すら分からなかったはずだ。藤井七段はこれで最年少タイトル奪取に大きく近づいたが、第3局までまだ時間はある。相手の攻めを受け止めて、素早い反撃で勝つ「渡辺流」の巻き返しを期待したい。
「恐ろしいまでの完勝」飯島七段が藤井七段の“魔法の2手”解説/将棋
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