上村五段が解説 藤井七段の「常識では計れないラストスパート」/将棋

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上村五段が解説 藤井七段の「常識では計れないラストスパート」/将棋
第2日の対局会場に入る藤井七段。表情には気力と闘志があふれていた=14日午前、札幌市(写真はいずれも日本将棋連盟提供)【拡大】

 後手の挑戦者、藤井聡太七段(17)が、敗色濃厚だった最終盤に驚異の粘りで大逆転し、木村一基王位(47)に2連勝した。“棋界の理論派”として知られ、2017年の銀河戦で藤井七段(当時は四段)に勝利した実績を持つ上村亘五段(33)が、今回の対局を分析。「常識では計れないラストスパート」と17歳の強さを表現した。 藤井七段は敗色濃厚になりながら、決め手を指す機会を木村王位に与えず、粘りで食らいつき、最終盤で勝負をひっくり返した。 第1局では猛烈な攻めで押し切ったが、第2局では受け(守り)の強さをみせた。特に120手目、木村王位に王手をかけられた▲3一角に対し選択した△5二玉。これが逆転を呼び込む勝負手となった。通常なら△5一玉と逃げる手が考えられるが、藤井七段は二段目に逃げて、木村王位の寄せを巧みに回避した。 一方、木村王位は受けの名手で知られるが、第2局では攻撃的な「相掛かり」の戦型を選択。序中盤から積極的に攻め、主導権を握って優勢に立った。だが最終盤、藤井七段の124手目である△2六角に対し、受けに回らず攻め合う▲4二歩を選択。これが裏目に出た。藤井七段より“0・5手”ほど手が遅れ、形勢が変わった。 終盤まで木村王位は、持ち時間や局面で、自分の優勢を疑っていなかったはずだ。今年3月の王位戦挑戦者決定リーグ。私も優位に立っていたと感じながら、藤井七段に敗れた。残り時間が少なくなり、追い詰められているはずの藤井七段が、正確な手を次々に指してくる。形勢は不利なのにミスを犯さない。これが私にとって重圧となり、逆転された。 対局相手からすると、フルマラソンのゴール目前で、一瞬で抜き去られたような感覚。常識では計れない、短距離走者のようなラストスパートだ。藤井七段は、対局の最初から1分将棋になっても戦えるのではないかと思ってしまう。 9日の棋聖戦第3局で藤井七段は渡辺明棋聖(36)=棋王・王将=に敗れ、「攻めが強い半面、守りに弱点あり」と言われた。だが今回の対局で、守勢でも崩れない受けの強さをみせ、ハードな2日制対局の最終盤まで集中力を維持し、見事に不安を払拭した。上村 亘(かみむら・わたる) 1986(昭和61)年12月10日生まれ、33歳。東京都出身。中村修九段門下。5歳で将棋を始め、98年に奨励会入り。慶大理工学部数理科学科4年時の2012年、四段となり慶大出身初のプロ棋士に。17年銀河戦で藤井聡太七段(当時ともに四段)に勝つなど、対戦成績は1勝1敗。昨年10月に五段昇段。プロ野球DeNAのファン。

[紹介元] 「芸能社会」の最新ニュース – SANSPO.COM(サンスポ・コム) 上村五段が解説 藤井七段の「常識では計れないラストスパート」/将棋