【ベテラン記者コラム(32)】無念、大西卓哉宇宙飛行士の「一発芸」を見逃した…

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【ベテラン記者コラム(32)】無念、大西卓哉宇宙飛行士の「一発芸」を見逃した…
大西卓哉さん【拡大】

 民間企業の宇宙船として初めて有人で地上と国際宇宙ステーション(ISS)との往復に成功したスペースXの新型宇宙船「クルードラゴン」がさきごろ、地球に帰還した。初めての有人試験飛行を成功させ、今秋に打ち上げられる運用初号機には野口聡一さん(55)、2号機には星出彰彦さん(51)の搭乗が予定されている。 約3年前の企画取材で、宇宙飛行士とお会いする機会に恵まれた。それが2016年7月から10月末までISSに長期滞在した大西卓哉宇宙飛行士(44)だった。この場で、のちに歯がみする経験をした。 大西さんは2008年度の宇宙飛行士選抜試験に臨んだ963人の応募者のなかで、合格した2人のうちの1人。10人に絞られた最終の第三次選抜試験。24時間監視されているなかでの閉鎖環境適応訓練で「自分の特技でその場を和ませろ」という課題が出された。 「半ばやぶれかぶれでしたよ」。ミュージカル好きの大西さんは、劇団四季オリジナルミュージカル「夢から醒(さ)めた夢」を一人二役で演じる一発芸をみせた。それまで冷静沈着とみられていた大西さんがみせた新境地。新たに高い評価を得ることになったという。もっとも、このエピソードは書籍などで披歴(ひれき)されており、新鮮味に欠けるという先入観もあって、あえて掘り下げることはしなかった。 だが、のちにこの演目と接して、なるほどと膝を打った。「夢から醒めた夢」は、好奇心旺盛な女の子「ピコ」が遊園地のお化け屋敷で、本物の幽霊の女の子「マコ」と出会う。交通事故で亡くなったマコは、悲しみから抜け出せずにいる母親をなぐさめたいと願い、ピコに1日だけ入れ替わってほしいと頼み込む。その願いを受け入れたピコはマコと入れ替わり、霊界空港へと旅立つ。 劇中には「夢の配達人」「霊界空港」「光の国」「パスポート」「ロケット」というキーワードがちりばめられ、宇宙に夢をはせる大西さんにとっては容易に感情移入できただろう。それこそ一世一代の大芝居だったかもしれない。 野口さん、星出さんが宇宙へ向かうのはともに3度目。大西さんも「もう一度、宇宙へいきたい」と願っていた。夢を再び実現させてほしい。そして、また取材をお願いし、目の前であの一発芸を拝見したい。(奥村展也)

[紹介元] 「芸能社会」の最新ニュース – SANSPO.COM(サンスポ・コム) 【ベテラン記者コラム(32)】無念、大西卓哉宇宙飛行士の「一発芸」を見逃した…