【写真】「感謝の1000倍返し」ポーズを決める堺雅人と香川照之(インスタから)
7年前の前作と同様に最終回で最高数字を叩き出した。32・7%は令和のドラマでは断トツ(2位も同作の第8話25・6%)だ。
全10話の平均も24・7%。TBSの連ドラが全話で20%を超えたのも、07年の「華麗なる一族」以来13年ぶり。昨今「連ドラは10%を超えれば成功」といわれる中で圧倒的な結果を残した。同局によると、3300万人が視聴したことになる。
堺は本紙に「ドラマに携わったスタッフ一同、出演者の皆さまのおかげで、コロナ禍の大変な中で最後まで演じきることができました。そして、多くの方に見ていただいたことに本当に感謝しています」とコメントした。
話題となったのが「顔芸」「歌舞伎芸」と呼ばれたオーバーアクションの演出。「やりすぎ」との批判も起きかねない演技は制作陣の大きな賭けでもあった。そこにはコロナ禍で、ほかのドラマでは見られない2つの“密な戦略”があった。
一つは「物理的な密」だ。劇中で繰り広げられたのは、出演者同士が顔と顔を突き合わせた激しいバトル。撮影現場では万全な感染対策をしつつ、互いの唾が飛び交う距離で演技合戦が繰り広げられた。人間味あふれる激しいやりとりが視聴者の心を熱くさせた。
もう一つは「精神的な密」。放送のたびに演技に対する視聴者のツッコミでSNSが盛り上がった。その反響にまるで生ライブのように出演者が“コール&レスポンス”で応え、演技がより大きくなっていった。SNSで拡散された「顔芸」「後ずさり土下座」「歌舞伎芸」などのワードは、独自の半沢ワールドとして国内だけでなく中国など海外でも受け入れられ、ドラマ自体がSNSとともに成長。視聴率を押し上げていった。
同志社女子大学学芸学部メディア創造学科の影山貴彦教授も「前作は社会人が抱えるフラストレーションを代弁してヒットした」と前置きした上で「今回はそこにコロナ禍が加わり、それが最後の1000倍返しにつながった。“しんどいけれど頑張ろう”という半沢のメッセージは、我々が前を向こうとする思いと重なった」と分析した。
制作側も何度も壁にぶつかった。当初は4月期の放送予定だったが、コロナ禍の影響で収録が2カ月中断。撮影再開後もロケ場所を借りられない事態が相次ぎ、スタッフの感染で撮影休止も余儀なくされた。前代未聞の生放送でしのいだ回もあり、撮了は最終回の3日前だった。
さまざまな困難を打ち破っての記録的視聴率。まさに視聴者もスカッとするコロナ禍への倍返しとなった。