中村先生に最後にお会いしたのは今年６月１２日。大阪市内でライブ配信を取材したときだ。「喝采」を初めてギター弾き語りに挑戦するなど、元気だった。ライブ後の取材でもゲラゲラと豪快に笑っていたのに…。
事ある度に食事に誘っていただいた。いつものバーでウイスキーをストレートでたしなむ。私とは５０歳近く違うが、失礼ながら全然気を使うことはなかった。それは先生が誰にでも対等に接し、優しい空気を作ってくれたから。
「歌ってうまくなるんですか？」と聞いたことがある。答えは「リズム」だと。人さし指でテーブルをたたきながら歌うとうまくいくと。アドバイスをもらった音痴な私が少しマシになった気がした。リズムを刻めば、音程は勝手についてくるらしい。
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私事だが、先月、大阪市内のホテルで結婚披露宴を催した。下見の際、見積もりは「さすが一流ホテル」という金額。妻と諦めかけていたが、中村先生にポツリと話すと、同所でディナーショーをやった縁もあり、ホテル側と掛け合っていただいた。憧れの式場で最高の１日となったのは中村先生のおかげです。
歌謡曲への熱意は絶えず「君たちはいい歌謡曲を聞いていない時代だから、かわいそう」と私につぶやく。いくつになっても新しいことにチャレンジする姿勢は私の心に残り続ける。（文化報道部・渡辺洋次）