【若狭勝弁護士の目】検察が死刑求刑していれば「万歳」は出なかった

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【若狭勝弁護士の目】検察が死刑求刑していれば「万歳」は出なかった
 東海道新幹線で昨年6月、乗客の男女3人が殺傷された事件の裁判員裁判で、殺人や殺人未遂の罪に問われた小島一朗被告(23)に横浜地裁小田原支部(佐脇有紀裁判長)は18日、「一生刑務所に入るためとの動機は、あまりにも人の命を軽視し身勝手だ」として、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。直後に小島被告は「控訴はいたしません。万歳三唱します」と絶叫。両手を3回、高々と上げるなど、最後まで反省の色をみせなかった。 判決が求刑を上回るケースはあるが、今回は求刑通りの無期懲役。裁判員が無期懲役の求刑に対して死刑を選択するのは難しく、検察が死刑を求刑しなかったことが問題だ。 求刑が死刑なら死刑判決の可能性があるため、被告は万歳三唱をするような態度に出なかったのではないか。最も重くて無期懲役と分かっているから「してやったり」と、あのような行動に出たと思う。 被告に反省の態度はなく、刑務所を出所したらまた殺人を犯すとしており再犯の恐れも高い。それを考えると、検察は死刑を求刑しなければならなかった。同様の犯罪を防ぐために必要だった。 死刑には、最高裁の判例である「永山基準」が参考にされることが多く、殺害された被害者が複数である点が強調される。だが、被害者が1人でも死刑の例はある。永山基準を守って死刑求刑を回避したのなら、国民感情を生かそうと始まった裁判員裁判の趣旨に反する。遺族の気持ちを考えるべきで、永山基準に替わる新たな基準が必要だ。そのためにもこの裁判は大きな意味があったはずだ。 被告は「猜疑性パーソナリティー障害」と診断されたが、刑務所では原則、雑居房に入れられ、ケアする仕組みはない。判決で「刑務所で刑責の重さに向き合わせる」としているが、現在の精神状態では難しいだろう。それができるなら、万歳三唱はしない。 (元東京地検特捜部副部長)
[紹介元] 「芸能社会」の最新ニュース – SANSPO.COM(サンスポ・コム) 【若狭勝弁護士の目】検察が死刑求刑していれば「万歳」は出なかった